松添聖史
第1東京弁護士会所属
夜な夜な飲み歩いていたところを、 某イベントディレクターに捕獲され(笑)、
コラ ムを書くことになる。
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®、™、©など、イラストや文字にに時々ついている記号の意味は何?

法律にまつわるさまざまな話題を、できるだけわかりやすく、実用的にお伝えして いこうというこのコーナー、第1回目は、最近web上でも時々見かける®、™、©といった記号の意味、違いについてお話したいと思います。

それぞれの記号の意味

まずは、最初にそれぞれの記号がどういう意味なのか、整理してみます。

®:登録商標を意味する表示。Registered trademarkの略
™:登録していない商標を意味する表示。TradeMarkの略
©:著作権を意味する表示。Copyrightの略

つまり、®と™は、商標を意味する表示で、©は著作権を表す表示なわけです。
商標権と著作権の違いは、簡単に言ってしまえば、商標というのが、商売に関連して使用されるマークを意味し、著作権というのは、商売に使用されるかされないかに関係なく、何らかの創作物でさえあれば著作物として著作権が認められるという点にあります。それぞれ複雑ですが、創作活動にかかわる人には重要なことですので、今回はまず商標(権)について説明し、次回著作権について説明したいと思います。

web上では見ることはありませんが、音楽CDの裏などを見ると、(P)という記号が表示されているのを見つけられると思います。あれは、そのCDの製作者(レコード会社)、実演家(歌手や演奏家)の権利(著作隣接権といいます。)を表示しているものです。

2商標ってなに?

商標というのは、商標法という法律が定めています。
その内容は、先程も言いました通り、「商売に関連して使用されるマーク」ということですが、法律上は、皆さんご想像の通り、もっと小難しい言い方で定義づけされています。正確には、

「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらとの色彩との結合(標章)であって、1. 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの、2. 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(商標法2条1項)」

と定義されています。要は、「商売をする人が、その商品自体、又は商売そのものを示すマーク」を商標というのだと考えてもらえれば十分だと思います。
例えば、キューピーマヨネーズには、キューピーのマークがついてますよね、あのキューピーのマークは、「キューピーマヨネーズ」という商品を示す商標ですし、不二家の前に立っているペコちゃんは、不二家の商売を示す商標なのです。

3商標の登録

さて、最初に®と™の違いについて、®は登録商標、™は登録していない商標と説明しましたが、商標というものは、単に商売をする人がマークを作っただけでは、商標権という権利を得ることはできません。商標は、必ず特許庁に対して、そのマークとその使用態様(先の例でいえば、キューピーは「マヨネーズ」という商品に使用することを登録する必要がありますし、ペコちゃんは洋菓子販売業を示すために使用することを登録する必要があります。)を登録しなければ、商標権という権利は認められないのです。
しかし、登録さえしてしまえば、商標権の効力として、登録した商標権者は、登録した使用態様については、そのマークの使用を独占できます。つまり、他人が同じマークを商標として登録することはできないばかりか、勝手に同じマークを商標として使用している人に対しては、そのマークの使用を止めさせることができるのです。

このように、®がついている商標は、登録された商標、つまり登録商標ですから、商標権という権利の対象となっている商標を意味するものなのです。

なお、この登録に関して、もうひとつ重要なことは、日本で登録した商標の効力は、日本国内にしか及ばないということです。つまり、ある商品を輸出しようとする場合、その商品の商標を商標権で保護しようとすると、その商品が輸出される国のすべてで登録等を行う必要があるのです。

4登録していない商標(不正競争防止法)

それでは、™というまだ登録されていない商標というものには、どのような意味があるのでしょうか?まだ登録されていない以上、™がついている商標というものには、「商標権」はまだ認められません。もちろん、今後登録しますよ、という意味で、予告の意味をこめてTMをつけておくということもあると思いますが、むしろTMという意味は、「私は登録はしていませんが、このマークで商売を行っています。」という注意を喚起させる点を上げるべきでしょう。
商標の登録というのは、もちろん登録料がかかるだけでなく、専門の弁理士さんに登録を委託する際の委託料など、結構お金がかかります。また商標は、特定の商売につかわれるものですから、将来その商売がヒットするかどうかわからないのに、お金をかけてまで商標を登録する必要はないと考えることも多いのです。
このように登録されていない商標について、商標法は何の保護もしていませんが、ほかの法律が、一定の要件のもとで保護を与えています。これが最近よく新聞で出てくる不正競争防止法という法律です。
不正競争防止法は、その名の通り、不正な競争を防止する法律です。他人が商売に使用している名称、マークなどを真似して、あたかもその人の商売であるかのように、似た商品や商売を行うことは、不正な競争ですから、一般に周知・著名と認められる名前やマークなどについては、不正競争防止法上、登録商標とほぼ同様の保護が与えられているのです。
このような事件としては、最近ではi-Macとソーテックのe-oneが争って、ソーテックのe-oneが販売差止めの仮処分を受けた事件が有名でしょうか? もっと最近では、スターバックスコーヒーが、ドトールコーヒー系列のエクシオールカフェというコーヒー店の看板、マークがスターバックスコーヒーの看板、マークと似ているとして、やはりその使用差止めの仮処分を求める事件がありました。詳しい経過は公表されていませんが、1週間ほどで、エクシオールカフェのマークの色は変わっていましたね(笑)。
このように、登録されていないとしても、商売に使用しているマークは保護の対象になりうるので、TMという表示のついた、「登録していない商標」というものにも意味はあるわけです。 結果として、登録している場合と登録していない場合との違いは、簡単にいってしまえば、実際に訴える場合に、自分の使用しているマークが周知・著名であることを立証しなければいけないこと、及び自分のマークが登録される前に、ほかの人が同じマークを登録してしまう危険性があるということにあると思います。

i-Macとe-oneの事件は、たった1回、両当事者から意見を聞いただけで結論が出たという、日本の裁判事情から見て非常にスピードの早い、それでいて「販売差止め」という思い切った判断を出した処分として、法曹業界(弁護士とか裁判官、検事をまとめて法曹《ほうそう》というんです。)でも話題になりました。ただ、決定にも具体的に述べられている通り、このような事件については、あらかじめ裁判になる可能性を考えておくべきであったのに、被申立人側の準備が間に合わなかったことが、このような早期かつ大胆な決定の原因のようで、特殊な事案といえるでしょう。

5記号に法的根拠はない

さて、ここまで商標に関する®と™について話してきました。しかし、実は、®と™という表示は、日本法のどこにも規定はありません。もともと®という表示は、米国商標法(Lanham法)上の商標に対する表示にすぎないのです。
日本法上、登録商標につける表示については、商標法施行規則第5条が次のように定めています。

商標法施行規則第5条 商標法第73条の商標登録表示は、「登録商標」の文字およびその登録番号とする。

つまり商標登録の表示は、®ではなく、「登録商標の文字およびその登録番号」なのです。もっとも、上記の規則第5条に出てくる商標法第73条は、「その商標が登録商標である旨の表示を付するように努めなければならない。」と規定しているだけですから、そもそも登録商標に対して、何らかの表示をつける必要は必ずしもないのです。
もちろん、登録していない商標については、特別な権利も認められませんので(一定の要件で不正競争防止法の保護を受けられるだけです。)、そのようなマークに対する表示(™)に関する法律の規定も存在しません。

ただ、法律に規定はなくても、®や™は、現実社会の慣習として認められているものですから、その使用法は遵守する必要があります。つまり、登録していない商標に®をつけるのは、慣習という社会のルールに反する行為ですから、してはいけません。例えば、あなたが登録もせずに®をつけたマークを使用した場合、同じマークを商標として登録した商標登録権者から訴えられることは十分にありうるのです。

6利用上の注意

以上で、®、™の意味については、大体理解いただけたでしょうか?最後に、他人の登録商標の取り扱い方について、お話したいと思います。他人の商標を利用する際の考え方としては、その商標のイメージ、真の商標保有者のイメージ、及びその商行為そのものに対して、障害となるような利用をしてはいけないということです。また、いずれの場合にも、登録されている商標(®のついているもの)と、登録されていない商標(™のついているもの)を特に区別する必要は無いでしょう。

もう少し具体的に、その商標の種類と、使用法との組み合わせで考えてみましよう。

まず、普通の文字商標(文字だけの商標)の場合です。たとえば「MICROSOFT」も商標ですが、このような文字商標の場合、商売・宣伝と無関係であって、その利用する媒体が商標保有者と無関係に作成されたものであることが明らかである限り、基本的には自由に使用できると考えていいと思います。
例えば、このコラムでも多くの商標を利用しています。(「MICROSOFT」「キューピー」など) しかし、このコラム(利用した媒体)が、商標保有者と無関係に作成されたものは明らかですよね。これとは逆に、例えば、このコラムの題名が「教えてMICROSOFT」で、コラムの中身がパソコンに関する解説だったりした場合、もしかしたら本物のMICROSOFTがコラムを書いたのか、又は何か関係があるかも?と考える人が出るかもしれません。このような場合には、商標保有者の許可を得ない限りその商標の利用は控えるべきです。
また、商売・宣伝に使用する場合、例えば、本の題名を「MICROSOFTの成功術」としたり、宣伝のバックに「MICROSOFT」の文字をデザインしたりする場合にも、商標を本来使用している人に許可を得るべきです。
いずれにしても、その商標を故意に中傷したり、イメージを損なうような利用をすることはいけません。

次に、イラスト・図形からできている商標の場合には、全くの私用で利用するのでない限り、商売に利用したり、あるいは単にHPにデザインとして利用したいというように商売に関係しない場合であっても、商標保有者の許可がない限りは使用しない方が無難です。たとえば、キューピーマヨネーズからキューピーのイラストを取り込むような行為は控えなければなりません。
商標は、商売に関するマークですから、他人の商標を商売に使用することは出来ないにしても、イラスト・図形の商標に関しては、それ以外の場合でも、その利用には注意が必要です。これは、商標の問題というよりはむしろ著作権の問題なのです。

というわけで、次回は著作権についてお話したいと思います。
なお、他人の商標の利用に関しては、あくまで基本的な指針として理解してください。実際の問題の場合は、更に細かい事情が関係しますので、改めて専門家等に相談してください。

日頃から疑問に思っている事や、現在直面している問題など法律に関する質問を受け付けています。RGMまで気軽に相談してくださいね。


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