松添聖史
第1東京弁護士会所属 50期。
現在、イギリスに本部のあるフレッシュフィールズ法律事務所に勤務。
酔ったところを某イベントディレクターに捕獲され、コラム執筆に至る。
まぁ、内容が内容だけに固い話になりがちですが、お付き合い下さい。
まぁ、実際の仕事、酒飲み話などに少しでも役立てばと思います。
ご意見ご質問等は matsuzoe@mail.infoseek.co.jp まで

私的使用のための複製

前回は、著作権について基本的なことを説明しました。細かいことはまだまだありますが、ここで大学の授業みたいなことをしても仕方ありませんので、今回は、他人の著作物を利用する場面について簡単に説明したいと思います。

前回お話したとおり、著作権とは、簡単に言えば「著作物を独占的に利用できる権利」といえます。しかし、社会公共の目的のため、又は具体的な利用態様とそこから著作権者が受ける経済的不利益との比較に基づいて、著作権の利用にはいくつかの制限が設けられているのです(著作権法30〜49条)。

全てをあげることはできませんが、例えば、私的使用のための複製(30条)、図書館での複製(31条)、引用(32条)、学校による複製(35条)、非営利目的の演奏(38条)、裁判手続きに必要な複製(42条)などは、著作権の制限とされています。つまり、上記のような著作物の利用に対しては、著作権者は禁止することができないということなのです。

今回は、この中から「私的使用のための複製」を説明したいと思います。

著作権法30条は、「著作物を私的使用する目的であるなら、その使用する者は、その著作物を複製することができる。」と規定しています。

ここで、難しいのは「私的使用」とは何を意味するのか?ということです。

法律上は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」と定義されていますが、これでもよくわかりません。まぁ一人で使うだけなら「私的使用」なのは間違いありませんが、最大限どの程度の範囲内で使用することが「私的使用」に当たるかは問題です。一応の目安としては、社内の同好会やサークルのように、10人程度が一つの目的で集まっている限定されたグループでの使用は「私的使用」にあたるとされています(加戸守行『著作権法逐条講義』181頁)。つまり、使用するものが少数であり、なおかつ特定されていることが必要なのであって、一般の企業内部で使用するためにコピーをしたなどというのは、「私的使用」に当たらないとされているのです(東京地裁昭和53年7月22日判決 無民行判集9.2.534)。

なお、使用する者自身が複製する必要がありますから、例えばコピーやダビング業者に頼んで、コピーやダビングをしてもらった場合には、著作権は制限されず、著作権者の許可なく複製することは認められません。

さらに、ビデオのダビングという話になると、平成11年の著作権法改正によって、ビデオ、CD―ROM、DVDその他コピープロテクトがついている著作物については、いくら私的使用であっても、著作権者に無断でそのプロテクトを外してコピーすることは許されないということになりました(30条2項)。ただし、コンピュータプログラムについては、その所有者に限りバックアップ等必要な限度で複製をすることだけは認められています(47条の2)。

もう一つの身近な私的使用の例外は、MD等のデジタルコピーが可能な録音機器についてです。MD等のデジタルコピーでは音質が劣化せず、レンタルCDや、デジタル放送等と併せれば、事実上、利用者はCD代を払わずに、CDと同等の著作物を手に入れることができます。そのため、このようなデジタルコピーが可能なMDコンポ等の録音機器を購入する際に、購入者は、純粋なコンポの値段に補償金を併せて支払うこととし、この補償金が著作権者等に支払われるという仕組みを採用しています(30条2項)。お店では補償金と代金を区別して表示してはいませんが、皆さんの多くも、この補償金を払ったことがあるはずなんですよ。

 

さて、次回は著作権の制限の中で、もっとも重要だと思われる引用・パロディについて説明したいと思います。

肖像権

さて、実は主宰から、「肖像権の説明」についてリクエストを受けましたので、簡単に説明したいと思います。

肖像権と一般に言われているものは、実は人格的な側面の肖像権と、経済的な側面の肖像権とに分けられます。この両者は、後述するように、正反対に機能する可能性がありますので、私としては、経済的な側面を、パブリシティ権と呼んで(人格的な)肖像権と区別すべきだと思います。

人格的な肖像権については、法律上明文で認められてはいませんが、憲法13条を根拠として、実質的に最高裁(昭和44年12月24日判決 刑集23.12.1625)が認めているといわれます。いかにも判例といった、変な言い回し(?)ですので引用しましょう。

「憲法13条は国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法第13条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。」

最高裁なんだから「これを肖像権と称するかどうかは別として」ってのはどうなんでしょう? 一応司法の最高機関なのに・・・

一般に、プライバシー権の一環として、肖像も保護されており、勝手に他人の肖像を使用することは許されないと考えられています。

経済的なパブリシティー権については、近年議論が盛んです。よく引用されるのは、あのおにゃん子クラブの写真を勝手にカレンダーに使用したことが問題になった東京高裁平成3年9月26日判決です。

「芸能人の氏名・肖像がもつ、かかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価値として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。したがって、右権利に基づきその侵害行為に対しては差止め及び侵害の防止を実効あらしめるために侵害物件の廃棄を求めることができるものと解するのが相当である。」

つまり、勝手に有名人の氏名や肖像を使って利益を得ることは、当該有名人の商売の邪魔ですから、その行為を禁止したり、損害賠償を求めることができるということなのです。

ただし、この判決は、有名人と人格権としての肖像権との関係については、以下のように判断しています。

「かように氏名・肖像を利用して自己の存在を広く大衆に訴えることを望むいわゆる芸能人にとって、私事性を中核とする人格的利益の享受の面においては、一般私人とは異なる制約を受けざるを得ない。すなわち、これを芸能人の氏名・肖像の使用行為についてみると、当該芸能人の社会的評価の低下をもたらすような使用行為はともかくとして、社会的に許容される方法、態様等による使用行為については、当該芸能人の周知性を高めるものではあっても、その人格的利益を毀損するものとは解し難いところである。」

つまり、一般人には、自己の肖像を勝手に使われないための「肖像権」が認められますが、有名でないために「パブリシティー権」は認められません。逆に、有名人の場合は、社会的に許容される方法である限り、その肖像は既に有名なわけですから「肖像権」を認める必要がなく、ただその肖像によって生活しているわけですから、経済的な「パブリシティー権」が認められるのです。

 

ここがわからない、とか、こんな問題が起こったとか、全てには対応できないかもしれませんが、お気軽にmail下さい。お金は取りませんから、ご安心を。


バックナンバー第1回第2回第3回第4回 第5回




E-mail:mail@ryosgraphic.com