松添聖史
第1東京弁護士会所属 50期。
現在、イギリスに本部のあるフレッシュフィールズ法律事務所に勤務。
酔ったところを某イベントディレクターに捕獲され、コラム執筆に至る。
まぁ、内容が内容だけに固い話になりがちですが、お付き合い下さい。
まぁ、実際の仕事、酒飲み話などに少しでも役立てばと思います。
ご意見ご質問等は matsuzoe@mail.infoseek.co.jp まで

他人の著作物の利用

なんか、このコーナーだけ不定期更新になってる気がします。なんか、原稿の量も減ってる気がしますし・・・。弁護士の仕事っていうのも、結局はお客様任せなので、予定通りになかなかことが進まないんですよね。まぁ、事務所の人手不足というのもありますけどね。もしこれを見てる中堅弁護士の方がいましたら、ウチの事務所(一応念のため、私が経営者ではありません)、一度訪問してみませんか??

などと、人材募集はさておき、本題です。

今回は、他人の著作物を利用することについて考えてみたいと思います。他人の著作物を利用するといっても、その利用方法はいろいろでしょう。ここでは「引用」「パロディ」に分け、今回は「引用」についてお話をしたいと思います。

<引用>
「引用」については、著作権法上に規定があり、
1.公表された著作物を
2.公正な慣行に従って
3.報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内
で行われる限りは、著作権者の許諾なしに、他人の著作物を引用することが出来ます。

2.公正な慣行に従ってとは、簡単に言ってしまえば引用する必要性や必然性が一般的に認められることが必要であるということです。例えば、このページに宇多田ヒカルの音楽を流す必要性はありませんよね。だからいくら私が宇多田ヒカルの音楽をBGMにして、「これは引用である」とがんばったところで、そのような引用は認められないんです。

次に3.については、一般に、更に3つの要件に分けて考えられています。

(1)明瞭区別性 引用する著作物と、自分の著作物が明瞭に区別されていること

(2)付従性 自分の著作物が主であって、引用する著作物が従である関係にあること。例えば、このホームページで、不従性を説明する例としてドラえもんの公表された漫画全部をスキャンして引用して、「このような引用がみとめられるでしょうか?」などと述べるとします。この場合、確かに引用の必要性は認められるかもしれませんが、おそらくヤフーでは、私の議論は無視されて、このページはドラえもんに関するホームページであると分類されてしまうでしょう。海外のページなんかからは、間違いなく漫画のホームページとしてリンクされちゃいそうです。つまり引用したものの比率があまりにも多すぎるような場合、ドラえもんが主で、私の文章は従になってしまうわけです。これではいけません。

(3)必要最小限性 上の付従性と似ていますが、引用する著作物は必要最小限度でなければなりません。例えば、のび太のメガネのレンズはちょっと大きすぎるんじゃないか?という意見を述べる際に、ドラえもんの漫画の1ページ程度を引用するとします。まぁ意見をしっかりと(漫画におけるメガネの歴史とか)述べれば、引用の付従性は認められそうですが、メガネレンズの大きさを述べるだけなら、のび太の描かれている1コマを引用すれば足ります。この場合必要最小限の要件を満たさないことになるのです。

以上の要件を満たせば、引用は認められます。但し、引用する際には、必ず、その引用した著作物の出所(著作者名を含めて)を表示しなければなりませんので注意してください。また、引用が単なる誹謗中傷目的であるなどの場合には、引用した著作物の著作者の人格的な権利を侵害したと判断されることがありますので、無茶はいけません。

この、引用に関しては、去年の4月に東京高裁で出た上杉聰氏著『脱ゴーマニズム宣言』に関する事件が有名ですね。ご存知の方も多いと思いますが、この事件は、小林よしのり氏著の『ゴーマニズム宣言』という漫画の批評を、上杉氏が前掲の本で行うに際して、小林氏の漫画のカットの一部を引用したことに対して、小林氏が著作権法等の違反を理由に、上杉氏著の本の出版等の差止と、損害賠償を請求した事案です(正確には、著作権法上の複製権及び同一性保持権の侵害並びに不正競争防止法違反が理由です。)。現在も最高裁で争っているようですが、最高裁判決が出れば、漫画の引用に関する判断として注目されることでしょう。詳しくは、東京地裁の判決と東京高裁の判決を、以下でリンクしておきましたのでご覧下さい。また、この事件に関してはたくさんのホームページで白熱した(?)議論が展開されています。サーチエンジンで適当に調べればいっぱい出てきますので、興味のある方は一度どうぞ。ただ、白熱しすぎて若干不正確な議論も見受けられますので、その点はご注意くださいね。

主要な争点について、高裁の判断を簡単にまとめます。

まず、漫画のカット(絵と文字)の引用の可否について、小林氏側は、文章のみを引用すれば足りるとの趣旨の主張をしていましたが、高裁は、漫画のカット自体の引用を認めました。漫画という表現方法自体が、絵と文字の融合した表現方法ですから、この判断は妥当なものだと思います。

ただし、高裁は、引用の方法について、上杉氏が引用する際、コマ割を変更した点については、コマ割を変更することが「やむをえない」ものとは言えないとして、著作者の人格的な権利侵害を認め(著作者の同一性保持権の侵害)、20万円の慰謝料支払を命じました。確かにコマ割の変更によって、作者の意図したものと違う引用になったのであれば、人格権の侵害が認められるでしょうが、今回の場合はそんな場合には当たらないと思うんですが、皆さんいかがでしょう。問題の引用部分は、下の地裁判決の一番下に86847_039.tifというファイル名で添付されてます。
(しかし、最高裁も、せっかく判例集を作るなら、ファイルの添付の仕方をもう少し考えなさい!どれだけ、このファイルを探すのに手間がかかったか・・・)

本来は下の段のコマが、上のコマの左端につながるはずだったそうです。これを下にずらしたからといって、内容が変わったとは到底思えません。正確な引用ではないとしても、これによって、なんらかの「精神的な損害」が発生したとは思えません。高裁の判断には疑問が残るところです。

ついでに言えば、高裁は上のコマを「女性が殴られているのを軍人が煉瓦の蔭から見て驚いている場面と、軍人が業者に押印させているらしい場面」の2コマと数えてます。でも、、1コマですよねぇ。高裁裁判官は、あんまり漫画を読まないから、コマの数え方が不慣れなんでしょう。

ついでに言えば、高裁は上のコマを「女性が殴られているのを軍人が煉瓦の蔭から見て驚いている場面と、軍人が業者に押印させているらしい場面」の2コマと数えてます。でも、、1コマですよねぇ。高裁裁判官は、あんまり漫画を読まないから、コマの数え方が不慣れなんでしょう。

 

さて、次回は「パロディ」について、お話したいと思います。「パロディ」は、議論が固まっておらず、なかなか難しい問題です。次回までに、勉強しなきゃ・・・

 

<参考>
平成11年8月31日東京地裁判決
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/91AE94C85C7A43724925693B0024489F/?OpenDocument
平成12年4月25日東京高裁判決
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/07A9BA83A436238A49256936002A727A/?OpenDocument
なお、上記リンクは、最高裁判所のホームページ内にある、知的財産権裁判例集の該当判例に対するリンクです。

 

ここがわからない、とか、こんな問題が起こったとか、全てには対応できないかもしれませんが、お気軽にmail下さい。お金は取りませんから、ご安心を。


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